研究テーマ

当研究室では寄生蜂をはじめとした寄生性昆虫の生活史戦略の解明および寄主生物との相互作用の解明を主な研究テーマとしています。


 1. 寄生蜂における非寄主への産卵の適応的意義の解明

寄⽣蜂類は、⾮寄主昆⾍にも産卵することがあり、これはアクシデントだと⾒なされてきました。 しか

し我々のグループでは、⾮寄主昆⾍に産卵した場合でも、それに別種の蜂が同時に産卵すると、寄⽣が成功しうることを発⾒し、この寄⽣様式を「pirate parasitism(海賊的寄生の意味)」と名付けました。この現象は、生態系の理解や寄生バチ類の寄主転換を議論する上で重要なものです。現在はこの寄生様式の普遍性や発生頻度、生理メカニズムの解明を目指しています。

(参考: Kuramitsu et al., 2025)

プレスリリース

 

2. 植物用殺菌剤が捕食寄生者にもたらす“見えざる死”の解明

寄生蜂類や寄生バエ類は害虫の天敵として、農業においても重要な存在です。近年、作物を病害から守るために使われる殺菌剤が、寄生蜂類の寄生不全を引き起こすことが報告されました。我々のグループでは、この現象の普遍性、慣行農法での実態、生理メカニズムの解明を通し、作物の病害からの保護と寄生蜂類の保全の両立が可能な殺菌剤使用法の確立を目指しています。

 

3. 寄主ー捕食寄生者間相互作用に関する研究

 オトシブミ科昆虫、ゾウムシ科、キバチ科昆虫をはじめ様々な昆虫とそれに寄生する蜂類の相互作用を解明する研究を行っています。

 

4. 各地域の昆虫相の解明

地域の昆虫相の解明は、自然史の理解、環境の保全、農林業の促進などに寄与する基本情報として重要です。学術調査や地方公共団体からの委託調査などを通して、国内各地の昆虫を中心とした生物相の解明に取り組んでいます。これまでの調査対象地域としては、奄美群島*、トカラ列島*、甑列島(以上鹿児島県)、つくば市、神栖市(以上、茨城県)、士別市(北海道)などがあります。

* 調査許可及び採集許可を得て調査しております。

 


過去の研究 

・植食性昆虫、餌植物及び寄生蜂類の三者間相互作用解明(休止中)

植物ー植食性昆虫ー捕食寄生性昆虫の三者間相互作用(三者系)は、自然生態系や農業生態系の基本構造の一つです。三者系において、植食性昆虫が餌とする植物種やその二次代謝産物(毒物質)が、寄生蜂の生態や行動に与える影響を調べることで、植物と捕食寄生蜂の間接的な関係の解明を目指しています。

Keywords: tritrophic interactions, plant defense chemicals, HIPVs, chemical ecology 

(参考:Kuramitsu et al. 2016a; 藏滿・戒能,2018, Kuramitsu et al. 2019b; Isono et al. 2020)

 ・キバチ類、キバチ類共生菌とその寄生蜂類に関する生態学的研究(休止中)

植物の幹を食べる昆虫とその天敵昆虫の相互作用は、植物の葉を食べる昆虫とその天敵の相互作用と比べて理解が進んでいません。広葉樹を食樹とするヒラアシキバチ類とその寄生蜂類の系を材料に、森林生態系における樹木ー樹木食性昆虫ー共生菌類ー天敵昆虫類の四者間相互作用について、行動生態学や化学生態学的視点から研究しています。

Keywords: forest entomology, natural enemy, fungal symbiont

(参考:Kuramitsu et al. 2016b, 2019a, 2019c, 2019d)

(一般向け解説動画 [YouTube] )

・飼養ミツバチが利用する花粉に含有される栄養分析および訪花昆虫相との相互作用(完了)

 筑波大学保全生態学研究室ポスドク時代(2018-2020年)の仕事です

(参考:Nikkeshi et al. 2022)


これまでに主著論文(査読付き)で扱った昆虫

ハチ目

キバチ科

クロヒラアシキバチ Tremex apicalis Matsumura, 1912

ヒラアシキバチ Tremex longicollis Konow, 1896

タイワンヒラアシキバチ Eriotremex formosanus (Matsumura, 1912)

アメリカヒゲジロキバチ Urocerus albicornis (Fabricius, 1781)

ヒゲジロキバチ Urocerus antennatus (Marlatt, 1898)

ヒラタタマバチ科 

ニホンヒラタタマバチ Ibalia japonica Matsumura, 1912

クロヒラタタマバチ Ibalia leucospoides leucospoides (Hochenwarth, 1785)

ヒメバチ科

エゾオナガバチ Megarhyssa jezoensis (Matsumura, 1912)

オナガバチ類の1種 Megarhyssa sp.

コマユバチ科

オトシブミコマユバチ Bracon apoderi Watanabe, 1933

カリヤコマユバチ Cotesia kariyai (Watanabe, 1937)

ギンケハラボソコマユバチ Meteorus pulchricornis (Wesmael, 1835)

ネジレバネ目

カメムシネジレバネ科

ナガカメネジレバネ Blissoxenos esakii Miyamoto & Kifune, 1984

チョウ目

ヤガ科

アワヨトウ Mythimna separata (Walker, 1865)

クサシロキヨトウ Mythimna loreyi (Duponchel, 1827)

ツマジロクサヨトウ Spodoptera frugiperda (J. E, Smith 1797)

コウチュウ目

オトシブミ科

エゴツルクビオトシブミ Cycnotrachelus roelofsi (Harold, 1877)

ウスモンオトシブミ Apoderus balteatus Roelofs, 1874 

コブオトシブミ Phymatapoderus latipennis  (Jekel, 1860)

ゴマダラオトシブミ Paroplapoderus pardalis (Snellen fan Vollenhoven, 1865) 

カミキリムシ科

ケブカトラカミキリ Hirticlytus comosus (Matsushita, 1941)

カメムシ

コバネナガカメムシ科

ホソコバネナガカメムシ Macropes obnubilus (Distant, 1883)


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